鬼はSAL

「レイ、豆まきするわよ」

「豆まき?」

 ここはネルフ、リツコの研究室。今日は二月三日節分である。

 リツコは何時の間にか用意していた豆を取り出した。

「そうよ、鬼を追い出し福を呼びこむの、日本の伝統行事よ」

「・・・・確か歳の数だけ食べるの」

「あらよく知っているわね」

 コクリ

 レイは頷いた。

「私は14、博士は40です・・・・・」

 ゴツンッ!

 リツコの拳が頭を直撃した。痛さに涙を浮かべながら頭を押さえうずくまった。

「イタイ・・・・」

「レイ!私はそんなに歳はまだとってはいないわよ。まだ3・・・・・・・20よ

 実際の歳を言おうとしたがやめ、頬を赤らめながら小声で呟き豆を20数えて取る。

「10足りない・・・・」

 レイは豆を10数えてリツコの手に乗せた。

「レイ〜怒るわよ」

 ギュウ!

 青筋を立てながらホッペをつねった。

「イタイ・・・もう怒っているのに・・・・・」

「私の歳はいくつ?」

「3・・・イタタ」

「私の歳は?」

 ニッコリ笑っているがつねっている手は力がこもる。

「2・・・・20です」

「そうよ。私は20よ!だから豆も20なのよ」

 20に気合が入っている。何が彼女をそこまでさせるのであろうか?その姿にレイは言葉が出なかった。

「それじゃあまきましょう」

 リツコはレイに豆を渡すと二人で研究室にまく。

 

 

「鬼も追い払った事だし、これで良い発明ができるわね」

 満足するリツコ、だがレイにはわからない。

「博士は鬼が見えるの?」

「ふふ、鬼は見えないわよ」

「じゃあどうして?」

「昔話でね鬼は豆が嫌いなの、昔は鬼が居たかも知れないわ、今は見ないけどね。だから節分には豆をまいて鬼を追い出して福を呼びこむのよ。縁起担ぎよ」

「・・・・・鬼」

 レイは少し驚いた、MADと思っていたリツコがこんな事を知っていることを。

「さあて、コーヒーでも飲みましょう」

「・・・・・私、鬼を知っている」

「えっ?」

 リツコはコーヒーを入れながら驚いた。レイの瞳は本気である。

「今から追い出してきます」

「レイ!」

 レイは豆を手に取ると研究室を出て行った。残されたリツコ、コーヒーを飲み、苦笑して鬼を思い浮かべた。

「ふふ、あの子にとっては鬼かしらね」

 

 

 

 

 

 

 

 場所は変わって葛城邸。ここでも豆まきがおこなわれていた。

「鬼は〜外〜〜!」

「イタタタ、イタイよアスカ、強く投げないでよ〜」

「クエクエクエ〜」

 ヒカリから節分を教えてもらったアスカは、シンジに命令して豆を買ってこさせた。

「鬼は〜外〜〜!福は〜内〜〜!」

 そしてまくのは当然アスカ、鬼役はシンジとペンペンである。

「イタイイタイ!」

「クエクエクワ!」

 手加減を知らないアスカ、ぶつけられる方はたまったものではない。

「へへ〜〜ん、鬼は痛くて当然〜〜」

 止らない攻撃、シンジはボソッと呟いた。

今のアスカが鬼だよ

何ですって!!!

 聞こえたらしい・・・地獄耳である。

「え・・・・聞こえたの・・・・?」

 脂汗が流れる、額に筋を浮かべるアスカ。ペンペンはこの光景を見て思った『角が生えている』と、だが誰もペンギン語がわからないのでアスカに角が生えたのかどうかは謎である。

 シンジには角が見えているのであろうか?

(つ・・・・角が〜〜〜)

 見えているようだ。

「ふふふ、覚悟はいい?シンジ〜〜〜」

「あ・・・ああ・・・」

 腰を抜かして、詰め寄られるシンジ。

 

 ピ〜ンポ〜ン

 呼鈴が鳴った。だが二人は気が付かない。ペンペンが気づかれないようにそっと逃げ出した。

「ふふ、もう後が無いわよ」

「ご、ごめん・・・・」

 後は壁、もう逃げられない。

「ごめんですんだら、鬼はいらないのよ!!」

「ひっ!」

 アスカは手からこぼれるぐらい豆を掴んだ。そしてシンジに向かって投げつけ・・・・

碇クンッ!

 その声に二人は見た。レイがやって来たのである。

「あ、綾波!」

「何か用なの?」

 レイが見た光景は、か弱いシンジが赤鬼に今にも攻撃されようとする場面であった。

「やっぱり鬼は居たのね」

 迷わず、持っている豆をアスカに投げつける。

「イタタ、ファ〜スト何すんのよ!」

「節分、鬼を退治しないと、碇クンこっちに来て」

「う、うん」

 生命の危機に動転しているシンジは、腰を抜かしながらも四つん這いでレイの元に駆け寄った。

イッタイ〜〜、ファ〜スト!覚悟はできてんでしょうね?

 アスカは怒りがMAXに達した。

「まだくたばらないのね。えいえい」

誰が豆でくたばるかあ!!

「アスカよ。だってSALでしょ」

 レイは投げ続けた。アスカは痛いのを我慢して詰め寄る。

ASUKA STREK・・・・・・・・・・・・・・・

 バタンッ!

 突然アスカはその場に倒れた。

「碇クン、鬼は退治したわよ」

「う、うん・・・・」

 まだわけがわからないシンジ。アスカはうつ伏して大の字で倒れている。

「これで安心ね」

「う、うん・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 場所は変わってリツコの研究室。

「ナイスタイミングよ」

 リツコはモニターを見ながら携帯をかけていた。モニターに映っているのは鬼退治の場面。

「そう、ばれていないわね。アナタ、名前は何かしら?ふふ覚えておくわ」

 携帯の相手は誰なのだろうか?報告を聞くと電源を切った。

「これぞ節分ね」


 リツコさんって凄いサバのよみだ!10歳もごまかすなんて。

 レイちゃんにとっての鬼はやっぱりSAL!無事?に退治しましたね。でもこの裏には白衣軍団が暗躍していました(爆)

 こんな小説?でも最後まで読んでくれた方々に感謝します。


NEON GENESIS: EVANGELION 鬼はSAL